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「話を聞かない子」は、本当に聞く気がない?保育の質から考える子どもの姿

8月1日
読了時間: 5分
「話を聞かない子」は、本当に聞く気がない?保育の質から考える子どもの姿

「何度言っても話を聞いてくれない」

「みんなは動いているのに、あの子だけ遊び続けている」

「こちらを見ているのに、全然伝わっていない」


保育の現場では、こうした場面が毎日のようにあります。

時間は限られていますし、ほかの子どもたちも待っています。次の活動へ進まなければならない中で、話を聞かない子がいると、つい焦ってしまうこともあるでしょう。


そして、こんな言葉が出てしまうことがあります。


「ちゃんと先生の話を聞いて」


けれど、その子は本当に「聞こうとしていない」のでしょうか。


もしかすると、子どもを変えようとする前に、私たちが見直せることがあるのかもしれません。



「話を聞かない」という一つの姿だけでは分からない


大人から見ると、話を聞かずに遊び続けている子は、みんな同じように見えるかもしれません。


しかし、子どもの中で起きていることは、それぞれ違います。


遊びを途中で終わらせたくないのかもしれません。


次に何をするのか分からず、不安なのかもしれません。


自分に向けられた言葉だと気づいていないこともあります。


一度に伝えられたことが多く、何から始めればよいのか整理できていない可能性もあります。


周囲の音や動きが気になり、言葉を受け取りにくかったのかもしれません。

つまり、「話を聞かない」という行動は、子どもの中で起きていることの表面にすぎません。


行動だけを見て「聞く気がない」「集中力がない」と判断してしまうと、本当の理由を見落としてしまいます。



保育者の時間と、子どもの時間は同じではない


保育者には、一日の流れが見えています。


何時から次の活動が始まるのか。


給食までに何を終わらせる必要があるのか。


どのタイミングで片づけなければ、次の予定に影響するのか。


だからこそ、「そろそろ終わりにしよう」と考えます。


一方、子どもには大人と同じ見通しがあるとは限りません。


ようやく作りたいものが形になってきた。


友達との遊びが盛り上がってきた。


あと一つ積み木を置けば完成する。


そんなときに「お片づけだよ」と言われても、気持ちをすぐに切り替えられないことがあります。


保育者にとっては「次へ進む時間」でも、子どもにとっては大切な“今”の途中です。


この時間のずれを理解するだけでも、子どもの見え方は変わります。



「伝えた」と「伝わった」は同じではない


保育者が話したからといって、すべての子どもに同じように伝わっているとは限りません。


部屋全体に向かって声をかけた。

子どもの後ろから話しかけた。

遊びに夢中になっているときに、いくつもの指示を続けて伝えた。


それでも大人の側には「ちゃんと言った」という感覚が残ります。


しかし、子どもの側では、言葉が届いていないことがあります。


聞こえていたとしても、内容を理解できたとは限りません。理解できても、今の行動から次の行動へ移れるとは限りません。


大切なのは、「言ったかどうか」だけではなく、「その子に届いたかどうか」です。


子どもの聞く力だけを問題にするのではなく、言葉の長さ、声をかける位置、周囲の環境、伝えるタイミングなどにも目を向ける必要があります。



見通しが持てないと、動き出しにくい


「片づけて」

「早く集まって」

「次の準備をして」


大人には分かりやすい言葉でも、子どもには「このあと何が起こるのか」が見えていない場合があります。


なぜ片づけるのか。

片づけたあと、どこへ行くのか。

自分は何をすればよいのか。


終わりが見えないまま行動を求められると、戸惑ってしまう子もいます。


「このあと外へ行くから、積み木を箱に戻そう」

「この絵本が終わったら、みんなで給食の準備をしよう」


次の出来事や具体的な行動が見えることで、言葉を受け取りやすくなる子もいます。


これは、子どもを上手に動かすためのテクニックではありません。


子どもが状況を理解し、自分で次の行動へ移るために必要な情報を渡すという考え方です。



子どもだけでなく、保育全体を見る


子どもが話を聞かなかったとき、私たちはつい、その子自身に理由を求めます。


「集中できない子だから」

「切り替えが苦手だから」

「いつも話を聞かないから」


けれども、その子だけを見続けていても、理由が分からないことがあります。


そんなときは、問いを少し変えてみます。


その直前まで、何をしていたのか。

どんな気持ちだったのか。

次の活動への見通しを持てていたのか。

言葉は短く、分かりやすかったか。

声をかける場所やタイミングは適切だったか。

周囲は言葉を受け取りやすい環境だったか。


「どうしてこの子は聞けないのだろう」ではなく、「この子にとって、今はどのような状況だったのだろう」と考えてみる。


問いが変わると、見えてくるものも変わります。



保育者を責めるために振り返るのではない


ここで誤解したくないのは、子どもが話を聞かなかった原因を、すべて保育者の伝え方に求めるわけではないということです。


保育の現場では、一人の子どもだけに時間をかけられない場面もあります。


安全のため、すぐに行動してもらわなければならないこともあります。


どれだけ丁寧に伝えても、気持ちを切り替えられない日もあるでしょう。


だから、うまく伝わらなかったことを「保育者の失敗」と考える必要はありません。


振り返る目的は、誰かを責めることではなく、次にできることを見つけることです。


「今日は届かなかった。では、明日はどうしてみようか」


そう考えられる職場には、保育者同士で学び合える土台が生まれます。



子どもの見方を変えることが、保育の質を変えていく


子どもが話を聞かないとき、必要なのは「どうすれば聞かせられるか」だけではありません。


その行動の奥にある気持ちや状況を想像すること。

子どもに伝わる言葉や環境だったかを振り返ること。

一人の保育者だけで抱えず、職員同士で子どもの姿を共有すること。


こうした積み重ねが、子どもへの理解を深めていきます。


子どもをすぐに変えようとするのではなく、まずは子どもの見方を変えてみる。


話を聞かない場面は、困った行動として終わらせることもできます。


一方で、子どものことをもっと知り、自分たちの保育を見つめ直すきっかけにもできます。


その違いが、保育の質につながっていくのではないでしょうか。

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